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「Los paraguas de Buenos Aires」 (ブエノスアイレスの雨傘)
Letra : Horacio Ferrer (1933-2014)
Música : Ástor Piazzolla (1924-92)
ブエノスアイレスに雨が降っている 雨が降る
家路につく人々のことを 私は思う
貧しく小さな劇場の演し物のことを
雨に唇付けをする果物売りのことを
傘さえ持たない人たちのことを
私の傘が空に向かって開くのを感じる
“風は吹いてなかった 今も風はない” 私は言う
私の傘が急に空へ飛び出すとき
そして随分昔に降った雨に出会うとき
最後に君の悲しい顔を濡らしたあの雨
私たちの最初の抱擁を祝ったあの雨
それより前は 私たちを知らなかったあの雨
私たちは沢山の 沢山の雨を空に返した
新しい雨がすぐに生まれるから “さあ行こう”
空に向かって雨が降っている 雨が降る
ふたりと一緒に 私たちの傘が昇ってゆく
あんなに高いところまで “ねえ 君”
大きな空に向かって 空の端の方に雨がある
そして晴れた日々が始まろうとしている
その高いところで 雨は私たちを溶かして
二人をただひとつにする ひとつに
ひとつになって永遠に 永遠に
ひとつに ひとつに ひとつになったものだけを 私は思う
家路につく人のことを 私は思う
果物売りの喜びを思う
そして今も ブエノスアイレスに雨が降り続いている
私は傘など持っては来ない 雨が降る 雨が降る
邦訳:大澤 寛
“私の傘が急に空へ飛び出して行き 随分昔に降った雨に出会うとき” と言う様なシュールで都会的な内容