エクトル・デル・クルト・タンゴ五重奏団

エクトル・デル・クルト・タンゴ五重奏団“永遠のタンゴ”

 

2019年9月29日、武蔵野市民文化会館で武蔵野文化事業団主催、在日アルゼンチン大使館後援で来日中のエクトル・デル・クルト率いる五重奏団のコンサートが開催された。マエストロでバンドネオン奏者のエクトル・デル・クルトは日本ではまだあまりよく知られてはいないようであるが、既に1990年代にオスバルド・プグリエーセ楽団の一員として来日した他、パブロ・シーグレルの五重奏団のメンバーとしても来日しており、今回が初めての来日ではない。

普段はニューヨークで活躍しているようで、そのせいか何となく米国人にも受けそうな演奏スタイルを披露していた。昨今、本国のアルゼンチンを離れて米国で演奏活動を行っている人が僅かながらとはいえ出てきているやに聞いているが、デル・クルトの場合もその一人かも知れない。自らMCを務めていたが、日本語も結構こなしており、スペイン語の通じない日本では日本語で挨拶や簡単な説明をしたいと思ってニューヨークで勉強してきたようである。

因みに今回のメンバーは:

バンドネオンとアレンジ:エクトル・デル・クルト(Héctor Del Curto)

ピアノ:グスターボ・カセナベ(Gustavo Casenave)

コントラバス:ペドロ・ヒラウド(Pedro Giraudo)

バイオリン:サミ・メリディニアン(Sami Merdinian)

ジソー・オーク:(Jisoo Ok)

ダンス:ミリアムとレオナルド(Miriam Larici & Leonaldo Barrionuevo)

ピアニストのカセナベはウルグアイの出身であるが、バークレー音楽大学を出た後、今はデル・クルトの片腕のような存在となっており、この人のピアノで五重奏団を引っ張っていると言っても過言ではない程の存在感を示していた。

チェロのジソー・オークは韓国出身のニュージーランド育ちで、米国に渡ってジュリアード音楽大学を卒業し、タンゴだけではなく、クラシックからジャズや現代音楽まで幅広くこなしており、今はエクトル・デル・クルト夫人として常にこの五重奏団でチェロを弾いている。

コントラバスのペドロ・ヒラウドもバイオリンのサミ・メルディニアンも亜国人ながら、既に米国に移住し、タンゴだけではなくジャズの演奏も手掛けているようである。

つまりこの五重奏団はタンゴの演奏家である傍ら、米国で演奏活動を行っているのは、全員ジャズの素養があり、また不自由なく英語を話しているところなど、これまでのタンゴの演奏家とは異なる新しい流れを生み出す将にヌエボ・キンテートと言える。

演奏曲目は圧倒的にピアソラ曲で、“ブエノスアイレスの冬”、“ブエノスアイレスの夏”、“リベルタンゴ”など9曲を披露した。その間に日本人の好みを知ってか、古典曲の“エル・チョクロ”やオスバルド・プグリエーセの“ラ・ジュンバ”なども演り、踊りの方はこれまたしっかりと“ガージョ・シエゴ”を忘れずに入れていた処など、日本で如何に受けるべきかを予め研究していた様子も伺えた。

コンサートのなかばにクラリネットを持った男の子が登場すると、マエストロのデル・クルトが日本語で「チョーナンのサンティアゴ・デル・クルトです」と紹介した。つまりデル・クルトとジソー・オーク夫妻の長男という訳である。“オブリビオン”を見事に吹きこなして、大きな拍手が来ると、そこはまだ小学生で、照れたような戸惑ったような様子で一礼して舞台の袖に引っ込んだ。サンティアゴ少年は既にCD録音にも参加しており、今後が楽しみである。今からバンドネオンも手掛けてくれればなお結構かと思った人もいたようである。

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